以前、某雑誌編集部に掃除企画の監修を依頼された際、掃除機のかけ方について指摘を受けました。
原稿校正のとき、カーペットの掃除機がけの写真とともに「回転ブラシ付きのノズルは、前より後ろにかけたときのほうが、ゴミやホコリがたくさん取れます。
したがって〝押しがけ〞よりも〝引きがけ〞をていねいに行いましょう。」という文章が使われていました。
私は、1スイング往路復路(同じ場所)の際、押しがけも引きがけも必要な技術で、大切なことは往復6秒程度「ゆっくりかける」ことですと伝えました。
さらに、画像に使用されていた掃除機がダイソンだったので、ダイソン担当者に事情を話しメーカーコメントをいただいたところ、「ノズル(回転ブラシなど他ヘッド)に開発技術があるので、引きがけだけが大切とは言えない」とのことでした。
・・・裏話・・・
以前「ダイソン×掃除学(略)」というイベント講師をした際に、大手家電メーカー某社の掃除機とダイソン社の掃除機との比較で、フローリングの押しがけにおいて、ダイソンの掃除機は某社に比べてゴミを取りこぼさないという実験映像がありました。
その時、私が注目したのは掃除機をかけるスピードであり、イベント内で私が推進したスピードと同じだったことを覚えています。
某社の掃除機は、ゆっくり同じ時間で押しがけしたのに、ゴミを取りきれていませんでした。
つまり、押しがけにおいても掃除機の機種性能やヘッドにより、ゴミの取れ方は異なるということを、イベントの映像だけでなく現場経験を含め私は知っていました。
これらのことをメールで伝えると、返信メールには「NHKのためしてガッテンという番組で実験していた結果です!」とリンクが貼ってありました(http://www9.nhk.or.jp/gatten/articles/20191113/index.html)。
さらに「掃除機メーカーの担当者もそう言っていました」とのことでした。
ちなみに、その掃除機メーカというのは、ダイソンのイベントで比較されていた大手家電メーカーの某社でした。
掃除のプロの現場で使用する掃除機は、耐久性がありシンプルなものが多いです。
T字ノズル(ヘッド)も吸い込み口が中央にあるだけのヘッドの物が多いと言えます(安価な家庭用掃除機にもあります)。
その分、掃除機のかけ方にも技術が必要となります。
掛け方の究極的な例えですが、掃除のプロの現場で、平滑な床にウエットバキューム(水分など液体を吸引する専用掃除機)を使用する場合、床面への吸引密着が強く抵抗も大きくなるので、吸い付く感じを保ちヘッド角度を微妙に操作しながら、基本的に引きがけ(吸引)します。
家庭用掃除機の場合、それらの負担を軽減するために、タービンブラシなど回転ブラシ式と言った、各メーカーや機種によりヘッドに工夫がされているものが多く販売されています。
そのような工夫のされている掃除機は、押しながらかけるときも、抵抗が少ないと言えます。
掃除機のかけ方は、その機種の性能や使用するノズル(各種のアタッチメント)や、かける場所(素材)により変化するものですので、状況により押しがけも引がけも大切な技術の一つと言えるでしょう。
NHKのためしてガッテンで行っていた実験では、新品のカーペットに模擬的な粉末状の汚れをふりかけて、掃除機で吸い取るというものでした。
しかし、実生活の中でのカーペットの状況は少し異なります。
度重なる人の歩行などにより、カーペットの毛は踏みつぶされて倒れていることが多く、その下にも汚れが入り込んでいます。
大切なのは、毛の倒れている方向を確認することです。
そして掃除機の基本は、同じ場所を往復(往路・復路)してかけます。
カーペットに掃除機をかけるときは、毛の倒れている方向に押しがけ(往路時)する方が抵抗も少なく、表面の汚れが取れます。
引がけ(復路時)に倒れている毛を起こすように、奥の汚れを除去しながら起毛します。
ポイントは、毛の向きをよく見て、倒れている方に押しがけ、同じ場所を起毛しながら引きがけ作業を行うと良いと言えます。
なので、NHKのためしてガッテンで行っていた実験は実戦向きではなく、引きがけだけが重要ではないと言えるのです。
さらに、実験で使用している機種やT字ノズル(ヘッド)の性能の違いもありますし、素材や状況など様々な環境要因によって、掃除方法も変化するものなのです。
ちなみに、ダイソン社のT字ノズル(ヘッド)だけでも、素材いや環境や目的によって多くの種類があります。
結論
掃除機は「押しがけ・引きがけ」どっちがいいの? とは、押しがけも引きがけも必要な技術で、機種やノズル(ヘッド)の性能の違いもありますし、素材や状況など様々な環境要因によって、掃除方法も変化します。
掃除機のかけ方で大切なことは往復6秒(最低)程度「ゆっくりかける」と言うことです。
*基本操作について、詳しくは「掃除機のかけ方」を参照してください。
あとがき
掃除方法は、どんな汚れがどこに付着しているのか現状分析から始めることが大切です。
どんな汚れがどこに付着しているのかを理解して、なにを使ってどのように掃除をするのか考えることが掃除(うえき)の方程式です。
そして、掃除の方程式 に掃除理論の全てが集約されています。
今回の企画制作にあたり感じたこと
多くのメディアの掃除企画に共通して言えることですが、企画を作っている人やメーカーなど関わる人が、掃除理論を理解しきれていないともいえますが、それも仕方がないことかもしれません。
なぜなら、今まで誰もまとめきれなかった掃除理論をまとめあげたのが私であり、本当の意味での掃除の専門家が関わらなければ、メディアに限らず物作り(開発)の時点で、掃除に関する問題点は多くなると感じた一例でもありました。
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