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1. 掃除予防:「予防の知識」
ここで注目すべきは、「予防掃除」 ではなく「掃除予防」としている。
汚染予防のために掃除を行うのではなく、汚染しない工夫を含む、掃除をラクにする、または掃除の回数を減らすための「予防の知識」である。
現時点で不可能ではあるが、極論は、「汚れない・掃除をしない衛生空間」が理想である。
「掃除学」の真髄は「予防の知識」にあるとも言え、「掃除予防 は「予防医学」でもある。予防医学との関連性については、のちの第2編:掃除学関連知識における「掃除と健康」の章にて記す。
掃除の方程式の簡略図で見ると、掃除方法決定の際の、次回からの掃除をラクにするための、予防の知識となる。
*動画でご覧になりたい方はこちら↓(一部内容が異なります2016年公開)
(1)次回からの掃除をラクにするための予防
予防のために掃除の方程式展開図を逆から考えてみると、
例えば・・・
作業方法の知識では、簡単で効率良い作業方法は、掃除がラクになると言える。
洗剤の知識では、強力な洗浄効果で素材に優しい洗剤活用は、掃除がラクになると言える。
用具の知識では、素材に優しく物理的除去力も強い、取り扱いの簡単な用具は、掃除がラクになると言える。
ここに、経済性・安全性など考慮していくことで、より質の高い予防対策が行えると言える。
さらに、現状分析における、原因について考えてみると、「なぜ汚れたのか?」汚れ付着のプロセスとその原因に、掃除をラクにする予防対策の本質があると言える。
建築物の汚染における様々な掃除問題の対策は、利用者または居住者と建物の健康に重要な関係がある。掃除予防は、人と建物の健康を守る、最も身近な対策でもある。
*掃除予防の対策チャート
(2)汚染原因の改善対策
掃除予防を考える際、「なぜ汚れたのか?」原因を考えることから始める。
汚染原因の改善対策が、掃除予防では重要となる。
対策を大きく3つに分類してみると、「住まい方の改善」、「住まいの改善」、「その他」に分けることができる。
このうち、その他の分類に関しては、国や周辺地域の環境改善なども含まれ、個人の対策だけでは解決困難な事項もあるので、個人衛生として専有部となる「住まい」に関して説明していく。
2. 住まい方の改善
次回からの掃除をラクにするための予防を行うための「住まい方の改善」には、【掃除方法の改善による対策】と【生活習慣の改善による対策】がある。
(1)掃除方法の対策
住まい方の改善のうち、「掃除方法の対策」については、私のまとめた「住まいのお掃除マニュアル」や、メディアなどで多くの方が情報発信しているので、ここでは、掃除予防のための、生活習慣の対策について簡単に説明する。
(2)生活習慣の対策
各個人における様々なライフスタイルが存在している中で、掃除予防を生活習慣に取り入れて、今までよりも掃除をラクにしいくことも目的とする。
(3)住まい方の改善:掃除予防の生活習慣例
• 整理整頓
部屋が整理整頓されていないと、掃除は大変であり時間もかかる。物が多く部屋にあるということは、それらも含めて汚染されていくということであり、掃除箇所が多くなるほか、片付けながら掃除をするとその都度作業は止まり効率も悪く、結果的に整理整頓されている部屋に比べて、掃除は大変となり時間も多く必要となる。
整理整頓及び収納については、関連する専門家や多くの情報発信がされているので、その方法については各個人に適したものを調べてもらいたい。
• 日常的な掃除
汚れは、付着してから時間の経過とともに変化していく。多くの汚れは、付着してすぐなら除去しやすい傾向にある。
また、時間が経過するに従い、空気中の酸素の影響による酸化現象や、他の物質との接触による化学反応など、様々な理由から素材への付着力も変化し除去しにくい頑固な汚れになっていく傾向にある。
つまり、汚れを放置しないためにも日常的な掃除習慣は、結果的に掃除がラクになると言える。
• 積極的な換気
住まいの掃除対象となる汚れの中で、汚染範囲の広さや健康への影響を考えると、最も重要な汚れとは「ホコリなど含む空気の汚れ」であると言える。気密化された現代の住まいにとって、空気の汚れ対策として最も重要なことは換気対策とも言える。
例えば、人が多く集まる時や子供やペットが部屋で活動的に遊ぶときなど、機械換気の積極的な活用や、窓空け換気を行うなど、汚れた空気を外に排出し、新鮮な空気を外から取り込む習慣。
• 換気設備や空調機器の定期的なフィルター類掃除及び交換
普段目に見えない空気の汚れも、チリも積もれば目に見える汚れになる。住まいの中の換気設備として、キッチンのレンジフードや風呂場・トイレの換気扇、空調機器のエアコンや空気清浄機などを使用すると、そのフィルターにはホコリ汚れが溜まる。
見方を変えればフィルターに付着している汚れは、空気中に浮遊して呼吸に伴い人体に摂取されずに済んだ汚れでもあり、家具や家電などに付着しなかった汚れでもある。つまり、掃除機のように自動で汚れを集めてくれたとも言え、そのゴミを捨て綺麗にすることで、また汚れを効率よく集めてくれるのである。したがって、掃除をラクにするためにもフィルター類の掃除メンテナンスは大切なことであると言える。
• 汚染に配慮した生活
直接の汚れではないが汚れの原因となるものを取り除いたり、原因そのものとなる行為に制限をかけることも、掃除をラクにすることと言える。
例えば、水自体は汚れとは言えないが、使用後の風呂場やキッチン水栓の水分をふき取ることで水垢の付着予防、冬場の窓結露水はふき取ることでカビ予防、飲食物の摂取はダイニングで行いその他の部屋ではしないなど、汚れを増やさない汚染に配慮した生活習慣。
・継続的な対応と見直し
対策を決める時はいろいろ考えるが、実際に継続できているのか?や効果は?など、生活習慣の中に対策自体を見直すことも取り入れることが大切と言える。
目に見えるところに書き出しておくことやスケジュール表の月初めに告知設定しておくなどして、改善対策に対する継続的な対応をしやすい環境を作る。
ビジネスシーンでよく使われるPlan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Action(改善)PDCAサイクルの実行とも言える。
その他、各個人や環境に合わせた改善対策は、無数にあるとも言え、人・場所・時により、住まい方の対策も変化していくと言える。
3.住まいの改善
掃除予防、住まいの改善として、「現状で行える対策」 と 「リフォーム及び新築による対策」などに分けることができる。
最も効果が高いのは、リフォーム及び新築対策を行う際に、掃除メンテナンスを考慮した、設計や住宅設備や施工法などにて、掃除がラクな家にすることである。
もちろん、居住後には住まい方の改善も、行っていくことになる。
しかし、リフォームや新築には時間と費用が多く必要になるため、気軽に行うわけにはいかない対策と言える。
実際には、多くの人が今からでも行える、住まいの改善対策としては、「現状で行える対策」と言え、工夫やアイデア次第ではすでに家にあるものでも行うことができる。
(1)現状対策(掃除予防の分類)
では、住まいの「掃除予防」を、もう少し、理論的に考えていく。
掃除をラクにするための予防を、意識して行っている人はどのくらいいるだろうか?
住まいの掃除予防には、化学的な予防方法と物理的な予防方法に分類できる。
化学的予防は、一般的に認知されているものとして、化学的なコーティング(保護剤)の使用がある。
物理的予防の種類は多く、昔から使われている方法もある。言われてみれば、すでに行っている掃除予防も多くあるのではないだろうか。
1)化学的予防
化学的な掃除予防として、掃除後の再汚染を防ぐために、一般的に認知され多く活用されているのは、各種の保護剤と言える。
保護剤には、多くの種類があり、車用のワックスやガラスのコーティング剤、近年では外壁用の光触媒や親水性コーティング剤など様々な商品が発売されている。
掃除のプロの世界でも、特に床用ワックスなど、素材の保護や再汚染を防ぐために、保護剤すなわちコーティング剤を塗布する。
一般家庭においても、コーティング剤と言えば床用ワックスが主流のようだ。
掃除後に保護剤を施工することで、汚れの再汚染防止や付着後の掃除をラクに行うことができる。
保護剤の条件としては汚れがつきにくく、付着した汚染物質を容易に除去でき、併せて保護膜そのものが容易に再生できる物でなければならない。
掃除のプロの世界では、保護材の種類はとても多くその性能も多種多様であり、施工には専門的な知識と技術が必要とされるものが多いため、一般家庭で居住者による使用は比較的少ない。
これらのことからも、一般的にはあまり知られていない保護剤であるが、存在自体の認知度がある床用ワックスについて、ビル清掃などプロの現場で使用されるものを例に説明する。
1)-2 床維持剤
保護剤の代表的なものは、床面に使用する床維持剤(ワックス)などあるが、施工によってはかえって汚れを抱き込んだり、保護膜の劣化を生じて見苦しくなるので、保護剤についても洗剤類と同様に十分な知識が必要である。
床維持剤を塗布すると連続した薄い皮膜ができる。この皮膜ができることで次の効果が得られる。
① 床の磨耗と損傷を防ぐ
② 床の美観を高める
③ 汚れの付着を防ぎ、付着した汚れの除去を容易にする
④ 床掃除の作業性を高める
1)-3 床維持剤の分類
この他にも様々な製品が毎年新発売されており、塗布して乾燥させるものから、紫外線を当てることで硬化皮膜を形成するタイプのものまでと多種多様である。
床維持剤の分類の中の、フロアポリッシュをさらに分類してみると次のようになる。
フローリングなどで使用される、市販の家庭用床維持剤(通称:ワックス)の代表的なものは、フロアポリッシュの水性でポリマータイプの樹脂ワックスが主流のようである。
1)-4 床維持剤施工例
例)フローリングのワックス施工手順
① 古いワックスはうっすら黒っぽく、歩行などの磨耗によりワックスが剥げた所との色の違いで、床全体が汚れて見える。
② 水色のテープを境に、左側の床を掃除した後、ワックスを塗布した画像。テープ右側はワックス施工前の状態。
③ 床全体のワックス施工
④ 水色のテープを境に、上部の床を掃除した後、ワックスを塗布した画像。
⑤ 床全体のワックス施工
2)物理的予防
物理的な予防対策の種類は多く、すでに行っている対策もあるのではないだろうか?
例えば・・・
キッチンレンジフードのフィルターに後から外付けフィルターを追加する。汚れたら新しいものに取り替えを繰り返すと、ハウスクリーニングの現場経験から、内部シロッコファンの汚れ方は後付けフィルターのついていないものに比べて、ついているものは汚れ方が明確に分かるほど穏やかであると言える。
その他、
– 玄関マット
– 換気扇フィルター 倉庫トイレ
– 各種カバー
– 油はね防止 キッチン
– 他
また、家庭にある身近なものを応用することでも、物理的掃除予防を行うことができる。
一例として、調理に使う食品用ラップでリモコンなどを覆い使用することで、ボタンや隙間などへの汚れ付着を防ぐ物理的コーティングの役割を果たし、汚れたり傷ついた場合はラップを剥がすことでリモコン自体に汚れが付着していないことになり、また新しく食品ラップを張り替えることができる。
このように、物理的掃除予防はアイデア次第で無数にあるともいえる。
このジャンルで、新しいユーザーコミュニティーや、1冊の本ができるかもしれないと感じている。
(2)リフォーム・新築対策
掃除予防の中で最も効果が高いのは、リフォーム及び新築対策であるとも言える。その際に、掃除メンテナンスを考慮した、設計や住宅設備や施工法などにて、掃除がラクな家にすることが大切である。
これらについては、「掃除がラクになる法則」を活用し、2007年にまとめた「健康住宅:掃除がラクな家」の構想案にて発表している。
また、私の自宅は「健康住宅:掃除がラクな家」の実験棟として、実生活の中で各種対策の検証実験を行っている。
紹介については、またの機会にしたいと思う。
4.掃除予防まとめ
掃除予防では重要となる「住まい方の改善」と「住まいの改善」。
そして、各個人や環境に合わせた改善対策は、無数にあるとも言え、人・場所・時により変化していく。
「人」とは、各個人により綺麗や汚いと思う感覚の違いや、アレルギーやシックハウスに代表するような汚れに対する身体的反応の違い、掃除が苦手な人と得意な人など、臨床医学のように人の感情や反応は同じではない。
また、対策に関する経済的な事情も、人それぞれ異なる。
場所(素材)とは、掃除対象となる住まいの間取りや地域の違いだけでなく、汚れが付着している素材の違いなどにより、掃除予防の対策にも変化が生じる。
時(季節)とは、年を重ねていくことによるライフステージの違いで、子供から大人へ、親となり子供の小さいうちと手が離れてからの自分や家を見る時間ができ流などの変化や、若い時にはできた掃除も高齢者になると出来なくなっていく事もあるなど、人生の長い時間軸における変化に伴う掃除との向き合い方もある。
また、1年という時間軸で考えると、季節によっても発生する汚れの違いや掃除のしやすさの違いなどがある。
したがって掃除予防の対策とは、「人・場所・時」の変化を複合的に組み合わせていくとその数は無数にあると言え、各個人に合わせたその時のオーダーメード的、アドバイスとカリキュラムを含むプロデュース型の提案となっていくことになる。
そして、新たな職種カテゴリーとして、掃除学の理論を理解した専門家によるコーチング及びアドバイスが大切になるとも言える。
掃除をラクにするためには、予防が大切である。
しかし、今までよりも掃除をラクにするためには、予防対策も継続的に行うことが必要であり、住まい方など生活習慣も改善していかなければならない。
それらを実際に行っていくのは、大変なことでもある。
私自身、「もっと掃除をラクできないものだろうか?・・・」と、日頃から感じている。
そして、「掃除予防」の究極理論でもある「掃除がラクになる法則」の考案に行き着いた。
第8章では、「掃除がラクになる法則」 について解説したいと思う。
著者:植木照夫(クリーンプロデューサー、ベスト株式会社 代表取締役、掃除学研究所所長)
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