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除去力には、大きく分類すると「物理的な力」 と 「化学的な力」 があり、相互を効果的に活用して、汚れを除去することになる。
*第4章:除去力の知識(その1)より
*動画でご覧になりたい方はこちら↓(一部内容が異なります2016年公開)
化学的除去力とは
掃除で使用する代表的な化学的除去力といえば洗剤である。掃除のプロの世界でも、除去力の主役は洗剤と言える。
現状の分析結果をもとに、汚れを落とす化学的な除去力として、洗剤の知識について考える。
合成洗剤は、界面活性剤を主とし、助剤や添加剤などで、目的の汚れを早く除去できるよう、さまざまな種類が発売され、身近に購入できる。
主に、界面活性剤の働きによる、洗剤の種類が多い傾向にあるが、汚れのペーハー(PH)に合わせて中和・還元する力などで、汚れを除去するものもある。
重曹やクエン酸などを活用した掃除も、汚れのペーハー(PH)に合わせて、化学作用による除去力を、活用していると言える。
説明では主に、界面活性剤を主とした合成洗剤を対象に、話を進めていく。
洗剤選定基礎知識
洗剤選定の基礎知識としては、
(1)洗剤の分類を知る
(2)洗剤の上手な使い方を知る
などがある。
洗剤使用の判断
基本的に、掃除を行う時に洗剤を使用する事はとても多く、汚れを除去するためにも洗剤は必要とされてきた。
しかし近年では、軽度の汚れなら「水だけで汚れを落とすメラミンスポンジやマイクロファイバータオル等」除去力の高い掃除用具も一般的となり、必ずしも洗剤が必要とは言えない。その他、汚れによっては洗剤を使用しないで掃除を行う事も多々ある。
例えば、ホコリ掃除等の場合、掃除機やタオル等の掃除用具で除去出来てしまうことが多い。
とはいえメリットも多く、掃除をする際に洗剤を使用する事で除去出来る汚れが多くあるのも事実である。
先に述べたホコリ掃除でも、ホコリ汚れに油脂性の物質が多く混在している場合は、洗剤を活用すると効率的に掃除が出来る。
また、 “こすり取る”または“削り取る”などの物理的な力を使わずに、洗剤を使うだけで汚れを除去できれば、素材を傷つけるリスクを軽減させる事ができるし、作業もラクになる。
しかし、使い方を誤ると素材を損傷させたり、汚れやすくなったりする。
そのため少なくとも、分析された汚れを除去する際、洗剤の選定では「洗剤を使用するのか?」、「どんな洗剤を使用するのか」など、洗剤の必要性や分類を知る事が求められる。
さらに、洗剤を上手に使うためにも洗剤の知識が必要とされる。
洗剤と言ってもその種類はとても多いので、ここでは、家庭用の代表的な洗剤についてかんたんに説明していく。
(1)洗剤の分類を知る
一般的に洗剤とは合成洗剤のことを言うが、洗浄作用の主な成分は界面活性剤である。
家庭用品品質表示法では、洗浄作用の主な成分が界面活性剤の場合を「石けん・合成洗剤」とし、酸剤やアルカリ剤の化学作用によるものを「洗浄剤」と分類している。
一般家庭においては、合成洗剤と洗浄剤が分類されている事はあまり認識されていないので、まとめて洗剤とし、石けんとは区別して説明をして行く。
(1)- ①なぜ洗剤で汚れが落ちるのか?「界面活性剤」
洗剤の目的は洗浄することである。水を使って汚れを落とすとき、洗剤を一緒に使うと汚れが良く落ちるのはご存知と思うが、
なぜそうなるか?・・・とくに水になじまない油汚れを落とすのに、洗剤の助けが必要なのはどうしてなのか?
かんたんに説明すると、市販されている洗剤の多くは界面活性剤を「主剤」とし、これに各種の「助剤」や「添加剤」を加えた組成となる。
つまり主役は『界面活性剤』ということになる。
最近では植物性の界面活性剤もあり、純植物性洗剤も販売されている。
2つの特性を持つ界面活性剤
界面活性剤は、1つの分子に“親水基”と“親油基”という全く相反した性質の2つの部分からなっている。
そして、界面活性剤の分子が油の表面に吸着し、親油基を油のほうに、親水基を水のほうに向けて、整然と配列することにより本来は水に溶解または混和することのない油が、水の中に粒子として分散し乳状になり1つのグループになる。
界面活性剤の性質
• 水と油、両方と親しい
• 表面張力を低下させ水が油汚れの中へ浸透しやすくなる
• 油の粒子が小さくなり液中に分散する乳化作用がある
• ミセル臨界濃度を超えると界面活性剤による表面張力低下率や洗浄力は変わらなくなる。*濃度が高ければ洗浄力も高くなる訳ではない。
界面活性剤の種類と分類
界面活性剤は水に溶かした時に生じるイオン(原子が電気を帯びている状態)形式により、次のように分類する事が出来る。
活性剤の特徴
陰イオン界面活性剤
陰イオン界面活性剤は水に溶かした時マイナスイオンを持つもの(親水基がマイナスに帯電)で、主に石けんや合成洗剤等がある。
陽イオン界面活性剤
陽イオン界面活性剤は水に溶かした時プラスイオンを持つもの(親水基がプラスに帯電)で、洗浄力は劣るが殺菌剤・柔軟剤・洗髪用リンス剤・帯電防止剤等に使用される。
* 陽イオン界面活性剤と陰イオン界面活性剤を混ぜると、+−0で効果は無くなるので併用は避けるようにする。
両性活性剤
両性活性剤はpH によって親水基の部分がプラスに帯電したり、マイナスに帯電したりする、両方の性質を持った界面活性剤。
洗浄性や起泡性を高める補助剤として広く使用されている。
主にシャンプー・洗顔料・工業用洗剤・化粧品等に使われる。
非イオン界面活性剤
非イオン界面活性剤は水に溶かした時イオン性を示さない(親水基が水中でイオン解離しない)が界面活性剤の働きをする。
泡立ちは少ないので濯ぎが容易であり、水の硬度に影響を受けにくく汚れの分散力はやや弱いが、油汚れ等の除去性はとても良い。
近年、非イオン系界面活性剤の使用量は増加傾向にあると言われている。
洗浄剤や消臭剤やその他等に使われている。
(1)- ②洗剤の分類
住まいで使用する一般的な洗剤選びのポイントとしては、掃除をする場所や汚れに対してそれぞれに対応した洗剤が販売されているので、目的にあった製品を選ぶと良い。また、製品の示すpH値の違いによって、中性洗剤・アルカリ性洗剤・酸性洗剤や、洗浄補助剤・添加剤などによって溶剤入り洗剤、研磨剤入り洗剤、酵素入り洗剤などに分類することもできる。
* 一般的に洗剤というと合成洗剤のことをいう。しかし、近年話題となっている重曹やクエン酸などを使用するナチュラルクリーニングなどは、洗剤ではないが化学的な除去力を上手に使っている掃除方法である。また、*1弱アルカリ性の重曹(pH8.2)を水に溶かして65度以上になると、強アルカリ性の部類に入る炭酸ソーダ(pH11.2)となり、油汚れ等の落ちは良くなるが取り扱いには注意が必用となる。*1 石鹸百科より(株式会社 生活と科学社)
中性洗剤
pH値6〜8の洗剤で、界面活性剤を主成分とする。
洗浄力は普通で素材に優しい洗剤。
その用途は幅広く、様々な素材に使用出来る万能洗剤でもある。
家庭では食器用中性洗剤が代表的。特殊な汚れや経時変化等により頑固汚れにならなければ、住まいの洗剤はこれ1本でも良いのでは?と思えるほど便利な洗剤である。
アルカリ性洗剤
弱アルカリ性洗剤(pH値8〜11)と強アルカリ性洗剤(pH値11〜14)があり、油やタンパクなど油脂系物質を分解すする性質を持つ。
弱アルカリ性洗剤は、中性洗剤よりも洗浄力があり比較的扱いやすいが、溶剤入りのものは洗浄力は高くなるが塗装面やゴム質系素材等は傷む事もあるので使用を避けるようにしたい。
また、洗浄力もpH値が高くなるほど効果も高くなるがリスクも高くなり、素材によっては変色したり溶けたりする事もあるので、使用には注意が必用。(*特に強アルカリ性洗剤は要注意)。
家庭用洗剤では、キッチン用の洗剤や配管用洗剤等がある。
酸性洗剤
弱酸性洗剤(pH値3〜6)と強酸性洗剤(pH値3以下)があり、水垢汚れやし尿汚れ等を分解する性質を持つ。鉄などに付着するとさびやすくなるなど、素材によって注意が必用。
特に、強酸性洗剤は効果も高いが人体や素材へダメージを与えるリスクも高くなるので要注意である。家庭用洗剤では、トイレ用洗剤等がある。
漂白剤
漂白剤には酸化剤と還元剤があり、酸化剤には塩素系と酸素系、還元剤には還元系となる。塩素系は漂白力に優れ殺菌効果もあるので、カビ取り剤やキッチン用の漂白剤としても使用されるが、衣類等の場合白物にしか使用出来ない。
酸素系は白物だけでなく色物にも問題なく使え殺菌効果もある。
還元系は鉄サビなど酸化で出来た汚れから、酸素を取り除き還元する事で汚れを落とす事が出来る。
*詳しくは消費者庁の家庭用品品質表示法:衣料用・台所用・住宅用の漂白剤の区分参照
研磨剤入り洗剤
一般家庭ではクレンザーが主流である。
家庭用品品質表示におけるクレンザーとは、研磨材及び界面活性剤その他の添加剤から成り、主として研磨の用に供せられるもの(つや出しの用に供せられるものを除く)とされている。
近年、液体状のものが主流ではあるが、粉末やペースト状のものもある。
研磨剤入りの洗剤等は、“こする”などの物理的な除去力を併用するが、洗剤自体の化学的な除去力中に研磨剤と言う物理的な除去力の要素も含んでいる。
素材によっては傷がつくので、作業には注意が必用である。
溶剤
溶剤自体は水になじまず、油や油脂等の汚れ除去に使用される。一般的に家庭で使用する代表的な溶剤として、シンナーやエチルアルコール等がある。
プラスチックやゴム製品等の素材は溶けてしまう事があるので注意が必用。
その他の洗剤
酵素系洗剤や特殊洗剤等、洗剤の種類はまだあるので用途に応じて各種洗剤を選ぶと良い。
(2)洗剤の上手な使い方を知る
掃除は、人が力を入れて行うのではなく、除去力に働いてもらう。
洗剤を上手に使うことができれば、今まで以上に掃除がラクになる。
洗剤を上手に使う7つのポイント
洗剤を上手に使う7つのポイントをつぎに記す。洗剤を上手に使うためには、用具の知識や作業方法の知識も必要とされる。
1. 取扱説明書は必ず読む
使用する洗剤については、必ず使用上の注意や使用方法などの説明書きを読み、それに伴った使用をする。
*消費者庁の家庭用品品質表示法により、洗剤の成分や使用に関する注意事項等が表示されている。
2. 洗剤の使用濃度
洗剤には最適の使用濃度があり、“家庭用品品質表示法”およびその他の法規でこれを表示することが定められている。
ほとんどの市販されている家庭用洗剤はそのまま使用できるが、業務用や原液を薄めて使用するタイプのものなどは、適切な希釈倍率で薄めることが大切となる。
濃さを2倍にしたからといって、効き目が2倍になるとは限らない。
*濃度が高すぎる(ミセル臨界濃度を超える)と界面活性剤による表面張力低下率や洗浄力は変わらなくなる。
3. 洗剤の使用温度
洗剤の主成分でもある界面活性剤の水に溶けるスピードは、温度の上昇とともに速くなる傾向がある。
一般に温度が20℃(クラフト点*1)を超えると、界面活性剤がほとんど水に溶けるといわれている。
一例として、温度が10℃上がれば汚れは2倍早く落ちると考えられているが、安全性を考慮すると50度前後のぬるま湯を使用すると良い。
*1. クラフト点とは、界面活性剤がある温度以上にあるとき、急によく溶ける境目の温度のことを言う
4. 適切な用具を使う
汚れを早く落とすには、汚れのある場所や素材に合った用具を使い、洗剤の作用が早く汚れにいきわたるようにする。
スポンジやブラシ、その場所や素材(建材)にあった用具を選び活用することで、“効率よく”汚れを落とすことができる。
5. パッチテスト(patch test *2)
洗剤や用具を使用する前には、必ず目立たないところで試してから作業を進める。
それは、洗剤の効き方や用具の使い心地、汚れの落ち方などを確かめるためであり、もし組み合わせが悪い場合でも、目につきやすい場所よりも目立たない場所の方が視覚的にも被害を抑えることができるためである。
その際、汚れの付着している素材が、作業によって傷んでないかなどもチェックする。
*2. パッチテスト(patch test):一般的にはパッチテストというと、アレルギー性疾患の原因物質を調べるための検査をいう。しかしこの場合、直訳で“(作業場所の)一区画でテストする”という意味で、掃除で言うパッチテストとは、作業を始める前に目立たない所でテストをするという意味がある。
6. 注意!洗剤の混用 …まぜるな危険!
洗剤を使用するときは、むやみに他の洗剤と混ぜてはならない。
例えば、酸性洗剤と塩素系漂白剤を混ぜると有毒ガス(塩素ガス:c l 2 ) が発生して人体にとても危険である。
また酸性洗剤とアルカリ洗剤を混ぜると、それぞれの持つ特性が失われるので洗浄効果がなくなることもある。
さらに、素材(建材)を傷める場合もあるので、むやみに洗剤を他の洗剤と混ぜるのはリスクが大きいということになる。
7. 洗剤使用後のすすぎ作業 …最後が大切!
作業の最後は水洗いまたは水拭きを丁寧におこなう。
洗剤を使用後、建材に洗剤成分が残っていると汚れが付きやすくなったり、カビや微生物の発生原因ともなり衛生的にも良くない。
さらに、長時間洗剤が素材に付着していると、化学変化などにより素材を損傷する原因にもなるため、洗剤を使用したあとはすすぎ作業を忘れてはならない。
「洗剤の力」活用例
局部的なカビ汚れに付いて
コーキング素材の局部的なカビ汚れの場合、コーキングのシリコン素材はカビを除去するほどの物理的な力を使うと傷がついてしまう。
傷がつくと、素材表面に凹凸ができカビの栄養分となる汚れがつきやすくなるため、カビが生えやすくなると言える。
そのため、物理的な力よりも科学的な力を活用し、素材に傷がつかないように作業することが望ましい。
カビを除去するためにも洗浄剤に効率よく働いてもらうには、洗浄剤が長くカビ汚れに浸されて漂白殺菌してくれる時間を作る事がポイント。
掃除対象となる汚れ箇所に水をかけて湿らせ、ブラシ類でなでるように擦り、表面の汚れを軽く除去する。
その後、ティッシュなどを適度に整えて汚れの上にのせた後、塩素系漂白剤を塗布して10〜15分程度湿布して放置する。
ティッシュをどかし汚れ落ちを確認して、落ちていない場合は湿布作業を繰返し、落ち具合に納得出来たら、水でしっかり流してすすぎを行う。
掃除のプロの世界では、先に述べたように現在でも除去力の主役は洗剤とも言える。
頑固な汚れを早く落とすには、素材を傷めるリスクに向き合いながら、洗剤や洗浄剤の還元力など、ギリギリの強い化学的除去力を使うことも多い。
その際、化学的除去力の強さの選出や反応時間の判断などは、多くの現場経験や知識に基づく職人技としての「加減」が必要とされる。
しかし、掃除は個人衛生と位置づけ、プロの世界とは違う視点で、物理的除去力を併用した効率の良い化学的除去力の使用にとどめて、本章では紹介している。
実際、一般家庭における日常的な掃除で汚れをためなければ、食器用中性洗剤1本あれば、ほとんどの掃除を行える。
その際には、物理的除去力となる掃除用具や洗剤を上手に活用し、汚れと素材にあった掃除方法にて行うことが大切である。
それらについては、掃除方法「住まいの健康お掃除マニュアル」にてまとめている。
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