第2編4章:「掃除と経済・その4(新商品開発と掃除学)」

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掃除がラクな新商品の開発


現行商品の清掃性と改善

掃除がラクな建物については、「掃除がラクになる法則」を活用し、2007年にまとめた「健康住宅:掃除がラクな家」の構想案にて発表している。

また、私の自宅は「健康住宅:掃除がラクな家」の実験棟として新築し、実生活の中で各種対策の検証実験を行っている。


実際に多くの対策を行っており、効果を実感できるものもあれば、想像と違う結果であったりと様々である。

製造メーカーの説明とは違い現実は掃除が大変なものもあり、もっとこうすればいいのに、と、改善や新商品案も生まれた。


掃除がラクな建物についてこの2007年から研究してきたが、研究当初から感じていたのは、現行商品では対策に限界があるということだ。

建物もそれに関連する様々な「もの」も、掃除メンテナンスを考えて作られている物が少ないから、掃除が大変になるのである。


近年では、考えていないと言うと誤解を招くものもあるが、多くの製品は清掃性を理解しきれていないと感じている。

なぜだろうか?

それは、製品の開発に掃除をラクにするための清掃性改善に関する専門家が、関わっていないということが、大きな要因の一つであるとも言える。



清掃性改善の専門家

現行の商品開発は、マーケティングによりユーザーの不満や問題点を拾いだし、企業の社員により、開発されている。

その商品は、清掃性改善に関する掃除の専門家でない人達により考えられているのが現状である。


しかし、掃除理論がまとまりきれていない現状で、掃除のプロとは施工業者としての役割が大きく、汚れを落とすことには優れていても、掃除をラクにする専門家とは言えない。

そのような意味でも、10年以上前からその分野で研究している私は、唯一の掃除をラクにする清掃性改善の専門家とも言えるのではないだろうか?


クリーンプロデューサー植木照夫は、清掃実務経験20年以上、多数の掃除に関する国家資格を取得し、ビルから住宅まで様々な建物の掃除に対応できるほか、高所ロープ清掃作業による外装清掃、その他、害虫駆除やペット飼育による臭いの原因調査やカウンセリングを含む対策及び消臭作業、カビに関する調査から対策まで、あらゆる掃除に精通した掃除のプロでもある。


また、在宅ハウスクリーニングにおいては、マンション管理頭数日本一のD.A社(2019年時点)において3年連続顧客満足度総合全国第1を受賞(2016・2017・2018年)するなど、その技術の高さを表している。


掃除理論についても、2006年に「掃除の方程式」と「掃除がラクになる法則」を考案し、のちに独自の「掃除学」を提唱している。


その理論は、2009年の国土交通省の公募事業でも掃除をラクにする技術として紹介されたり、2008年・2010年の建築業界誌「日経ホームビルダー」での連載のほか、2015年・2018年の日経メディカル開発における医療業界のPR誌では、国立千葉大学予防医学センター 特任教授とアレルギー対策のための掃除に関する共同連載をするなど、建築業界や医療業界においても、高い評価をいただいている。


これらのことからも、技術・理論・国家資格を含む掃除の総合能力は日本のトップレベルであり、我が国唯一の清掃性改善に関する専門家とも言える。



建物は様々な「もの」の集合体

建物は、建材や設備や家電や家具など、様々なものの集合体である。


掃除に直接関係するのは、内外装の仕上げ表面素材や、実際に使用する設備類・家電類・家具類などに分類できる。

間接的には、設計上の間取りであったり、設備や家具の配置であったり、施工不良が招く汚れもあるので、正確な施工も大切な要素と言える。


もちろん、それらハードに対するソフトとして、使用者の使い方や住まい方なども重要となる。

それらすべてを総合的に考慮して、掃除がラクな建物になるのである。


では、住まいを例に、開発すべき商品群について考えてみよう。




開発すべき商品群の分類例


住宅建材

建材は、外装材・内装材に分類でき、主に床・壁・天井・窓サッシ・扉などの表面仕上げ剤の開発と言える。

個人的には、新しい外装のメンテナンスシステムを考えたので、それに伴う建材の開発が望ましい。


住宅設備類

住宅設備類は、大きく3つ分けて、キッチン?バスルーム・トイレ・洗面台などの水まわり設備、空調関連設備、照明器具や配線関連などを含むその他の設備、に分類することができる。

ある意味、もっとも重要な商品開発とも言える。


家電類

家電類は主に、洗濯機・掃除機などの生活家電、冷蔵庫・電子レンジ・食洗機などのキッチン家電、テレビなどその他の家電に分類できる。

これらの家電にも清掃性改善の余地があり、私にはそのアイデアもある。


家具類

家具類には、常設家具や、居住後に購入する家具のほか、壁面装飾品などもこちらに分類する。

このジャンルは、意外に開発余地が多くあり、私も未発表の新商品案がいくつかある。


その他

例えば、カーテンやブラインド、ゴミ箱や寝具なども掃除と関わりがあり、分類しきれないジャンルを、その他とする。


設計・施工

設計はシステムとしての開発であったり、施工はそれ以外に、掃除をラクにするための施行に伴う素材の開発などがある。

未発表だが、私の掃除がラクな家でも取り入れた施工方法もあり、それ以外にも施工の際に必要な素材開発案が出てきた。


使い方・住まい方

この項目は使用者により変化するので、1番複雑な項目とも言える。

使い方や住まい方については、開発段階から明確になっているべきものだが、その後の使用者への認知度向上を図るための仕組みづくりも重要なことと言える。



総合統括管理の難しさ

建物は様々な素材の集合体である。

その建物の掃除をラクにするには、多くのものの連携が必要になる。


先に、開発すべき商品群の分類を紹介したが、その各商品は多くのメーカーによりそれぞれ研究開発されている。

それぞれのメーカーで開発が行われているため、各商品の連携が取れにくいとも言える。


建材メーカーの中には、TOTO・DAIKEN・YKK APのように、業務提携によるリフォーム窓口やコラボレーションショールームなど、商品連携を行っている場合もあるし、リクシルなどは買収による複数のブランドを持ち、グループ企業の形を作る場合もある。


しかし、建材から設備・家電まで、掃除をラクにするための開発商品群全てを取り扱っているメーカーはないと言える。

その中でも唯一、ほぼ揃っているメーカーは、パナソニックだけとも言えるだろう。


また、住宅販売を始めたヤマダ電機や無印商品、多くの住宅関連商品を扱うニトリやその他のメーカーなど、プライベート商品として追従している会社も、今後期待されていく総合商品能力を持つ会社と言える。



日本の家電メーカー

各商品群を連携させるためにも、総合統括管理ができれば、一つの企業で全ての商品を開発せずに済む。

PCやスマートフォンのように、本体のプラットフォームが決まっており、アプリとなるソフトを組み合わせることで機能するような、仕組みがないのだ。


1例ではあるが、仕組みを作る際、協会などの団体が乱立するよりは、国が先導してその基準を作り、オープンプラットフォームを構築できれば、各メーカーの特徴や個性を生かした開発ができ、本体に取り入れるための基準ができる。

例えば、清掃性やメンテナンス性の項目や基準を定めるなどである。


そして、プラットフォームの基準作りの基礎となる学問が、植木照夫の掃除学なのかもしれないし、その可能性は大いにあると言える。



開発における固定概念の払拭

現代の住宅において、家電製品は切っても切れない関係と言えるほど、身近な存在である。

住まいの掃除をラクにする際も、掃除機やエアコンや空気清浄機など、とても重要な商品であると言える。


しかし、開発するにあたり、気になっていることがある。

それは、日本の家電製品の機能に現れている、販売戦略に関わることだ。

これは、家電に限らず、住宅設備などにも同じものを感じる。


私は、2010年から2017年の7年間の間に、有名掃除機メーカーのモニターを数社行ってきた。

その中で、ある海外ブランドのメーカーから、掃除機のモニターと一緒に日本市場導入に関する戦略的アドバイスの依頼を受け、現在の掃除機のトレンドやスペックの比較と、依頼商品のメリット・デメリットについて調査した結果、あることに気付いた。


1番人気のイギリス製ダイソン掃除機と、日本の家電メーカーの掃除機には、スペック的にも戦略的にも、違いがあったのだ。

詳細はレポートにまとめているが長くなるので、要点だけ記す。


ダイソン社は基本性能の強化と健康性をユーザーに提案しているのに対して、日本の家電メーカーは、マーケティングにより購入してもらうための機能を多く取り入れており、軽量で多機能な掃除機であった。


その結果、購入条件を満たす掃除機ではあるが、購入後の不満項目にも多く当てはまる掃除機だったのである。

そして、2017年時点で1番売れているダイソンの掃除機は、購入後の不満項目は少なく、基本性能と健康性で他社との差別化を図り、信頼ある高いブランド力も身につけていた。


日本の家電メーカーは、多機能で高性能ではあるが、それはマーケティングによる商品購入条件を満たし、売り上げを伸ばす戦略でもあるように感じる。

悪く言えば、売った後のことは2の次で、売れれば良いという結果が、購入後の不満につながっているのかも知れない。

これは、商品開発における固定概念の一つとも言えるのではないだろうか?


例えば、エアコンやその他の家電や住宅設備にも、購入後問題があるように感じる。

ラインナップの数も多く、フラッグシップモデルに成る程、商品購入条件項目を多く満たしており、リモコンに多くのボタンが付いている傾向がある。


それを使いこなしている人はどのくらいいるのだろうか?


10年間掃除不要という言葉の近くに小さく追記事項で「*フィルターの掃除」と載っているなど、購入者は10年間何もしないでもエアコンが汚れないと思って買ったのに・・・という意見を、掃除現場で何度も聞いてきた。


私個人的には、もっとシンプルに基本性能としての清掃性改善に取り組み、商品開発を行うことも重要と考えている。

それは、開発における固定概念の払拭となり、違った視点からの提案型商品となる可能性を秘めているのである。



プラットフォーム型の商品開発

1例ではあるが、携帯電話市場でも多くの日本の家電メーカーが世界で生き残れなかった背景には、多機能で複雑なシステム、スペックよりも購入後の使いごごち問題があったのかもしれない。

その反面、日本人は購入の際にスペック好きな部分もあるのかもしれない。

それは、宣伝戦略によるものかもしれないし、気質なのかもしれない。


しかし、世界的には、わかりやすくシンプルな構造の中で、それぞれの個性に合わせたオプションやカスタムメイドやアプリのような、多様な人種に対応する仕組みが求められているように感じる。


そのような背景からも、購入後に商品を使い続けていくための、掃除及びメンテナンス性の改善は、購入後の不満を軽減させる新たな商品開発の課題の一つといえるのではないだろうか。


売るためだけの商品開発にとらわれるのではなく、本当に良いものを・・・もっと良い商品を開発する際、ある意味では、現行商品を否定するかのような、矛盾が生まれるかもしれない。

もちろん、現行の商品戦略を破棄するのではなく、新しい戦略と同時進行や改善をしていく中で、比較していくことになると思う。


個人的意見ではあるが、携帯電話がスマートフォンに変わっていったように、基本性能を重視したプラットフォーム型の商品開発にシフトしていかなければ、日本の家電業界は、グローバル市場を生き残る事が難しくなるかもしれない。


また、ここで述べているプラットフォームとは、近年家電に組み込まれるインターネットオブシングスなどのIT関連技術とは違う目線で行う、物理的な基本システムを意味している。


この辺の議論についてはもっとお話ししたいこともあるが、次に話を進めていく。


ではここで、これまでの内容をわかりやすく説明するにあたり、具体的に企業と私が関わる場合のモデルケースを考えてみよう。




第2編4章では、「もしもパナソニックとコラボしたら」 について解説したいと思う。


著者:植木照夫(クリーンプロデューサーベスト株式会社 代表取締役、掃除学研究所所長)

植木照夫の掃除学研究所

掃除学研究所は、植木照夫により発案された、掃除理論の集約的公式「掃除の方程式(うえきの方程式)」と「掃除がラクになる法則(うえきの法則)」を基に、幅広く関連知識をまとめた新しい学問の研究サイトです。