第2編4章:「掃除と経済・その1(ビジネスモデル )」 掃除学関連知識

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掃除学を応用したビジネスモデル

学問は、経済に大きな影響を与える。

私の提唱する掃除学は、新たな経済効果を生む可能性も秘めている。



*動画でご覧になりたい方はこちら↓(一部内容が異なります)



掃除と新規市場開拓

現在ある、一般的な掃除ビジネスは、ビルや店舗や住まい等の建築物清掃の他、車や機器類やその他等「物」の掃除サービス、洗剤や掃除用具等の掃除関連の販売が主であると言える。


しかし、掃除を学問と捉え、その理論を活用する事で、もっと大きな新規市場を生み出す可能性を秘めているのである。



掃除と経済

現在の掃除ビジネスの主流である、建物の掃除。


長年の実務経験から、建物には掃除がラクなものと大変なものがある。

それらを理論的に追及していくと、掃除がラクになる法則がある。


そもそも、建物に限らず、ものを作った後に掃除を考えるから大変になるのであり、作る前の企画及び設計の段階から、掃除のことも考えて作ることが大切である。


これは、健康と同じように、病気になってから治療するのではなく、病気にならないための予防の方が大切ということである。

掃除がラクになる法則も、掃除学における掃除の方程式の中の、予防の知識であり、そこに新たな経済性を生み出す要素があるとも言える。

そうしてできた掃除がラクな建物は、そのまま商品として市場に投入することも可能だ。



掃除をラクにするための予防

建築は、高度経済成長のスクラップアンドビルドの体制から、近年はストック社会へと移行し、長く使い続けるための、メンテナンスが重要視されてきた。


掃除は、日常的に携わる、最も身近なメンテナンス行為であり、点検行為でもある。

建物のライフサイクルコストを考えても、掃除をラクにすることは経済的であり環境負荷を軽減できる。


ストック社会における、掃除を考えた建物作りは、その後の掃除をラクにするための予防行為でもあり、これからの、基準となるべきなのかもしれない。



掃除がラクな家

住まいを例に挙げると、家は建材や設備や家電や家具など、様々なものの集合体である。

それら個々の製品に対して清掃性改善の余地が十分にある。

また、設計や施工方法など実務的な面でも改善すべきことは多くあると言える。


これらを組み合わせて掃除がラクな家を作るのだが、その家にあった住まい方も大切な要素だ。

つまり、ハードとソフトに改善すべきことが多くあり、これだけでも、多くの企業や業界における新規市場創出につながる。


では、掃除がラクな家は、市場においてどの程度求められているのか?



需要の考察

私たちの目的は、生きることと言える。

生きていくために必要なことを最優先する。それは、DNAの情報でもある。

前章のでも記したが、掃除=健康を考えても、衣・住・食の住まいに関する健康は、人々が求める要素でもある。


例えば、日本人の2人に1人がアレルギーという国民病的現状を考慮しても、「自宅で実施可能な環境中抗原調整手法の開発」における掃除対策は、求められていると言える。

そして、それらの対策はクォリティーオブライフの向上につながるようなものでなくてはならない。

そのためにも、掃除をラクにする対策が必要と言える。

(*詳しくは、前章3−2掃除と健康「アレルギー対策と掃除」を参照してもらいたい。)


また、2017年6月発表の、国土交通省のサステナブル建築物等先導事業(次世代住宅型)についての助成金応募要項の、公募する住宅や住生活の質の向上に向けた取組テーマにも、掃除、メンテナンスの容易性が挙げられており、健康性だけでなく、家事の負担軽減についても求められている。


これらのことからも、掃除がラクな家は、新規市場創出に大きな貢献をもたらす可能性は高いとも言える。



健康住宅・掃除がラクな家の実験棟

掃除がラクな建物については、「掃除がラクになる法則」を活用し、住まいをテーマとして2007年にまとめた「健康住宅:掃除がラクな家」の構想案にて発表している。

この一部は、日経ホームビルダーでも連載していた。


また、私の自宅は「健康住宅:掃除がラクな家」の実験棟として新築し、実生活の中で各種対策の検証実験を行っている。


実際に多くの対策を行っており、効果を実感できるものもあれば、想像と違う結果であったりと様々だ。

設備類などは、ショールムに行き分解などをしてメンテナンス性を確認したのちに、住まいに取り入れたりもしたが、それでもメーカーの説明とは違い現実は掃除が大変なものもあった。

そして、もっとこうすればいいのに、と、改善や新商品案も生まれた。


この実験棟は実生活の中における、清掃性改善研究データに大きな貢献をしてくれた。



未来の掃除がラクな都市開発

現時点でほとんどは、掃除は建物がたった後に考えられている。


掃除は、メンテナンスにおける日常的に最も身近な行為であり、点検でもある。

だからこそ、掃除をラクにすることは新たな市場を生むビジネスチャンスでもあり、2009年12月に国土交通省の公募事業「建設業と異分野とのコラボレーション促進支援事業」でも紹介されたように、様々な業界に関わる技術・事業シーズでもある。


これらは、ビジネスモデル全体に植木照夫の掃除学が活用されることで、一貫性のある掃除がラクな建物となる。

そして、私のビジョンには、建物だけでなく、掃除がラクな都市開発まで、詳細に描かれている。



掃除がラクな都市は戦略的国策?!

街の建物やインフラを含む、すべてのものの掃除をラクにすることは、掃除がラクな都市開発でもあり、第2編第2章「掃除と歴史」でも紹介したように、歴史的に見ても公衆衛生大国である日本から発信する掃除学には、大きな価値と、それ以上の経済効果があるように感じている。


掃除がラクな都市のパッケージは、単に建物の掃除だけでなく、電車や道路・上下水道・設備機器やプラントなど、インフラを含む街全体の衛生性とメンテナンス性を考え取り入れたものである。

諸外国への最も大きな輸出技術及び商材でもあり、メンテナンスやその指導を考えると、長期にわたりその国との良好な関係を持つことができ、最も重要なインフラに関わることでもある。


ピースメーカー日本として、また、衛生大国日本として、掃除・メンテナンスをラクにする技術は、我が国の戦略的国策としても重要な可能性を秘めていることにもなる。


では、建物の掃除をラクにするさいに、掃除学を取り入れて、ビジネスモデルを考察してみる。



掃除がラクな建物のビジネスモデル概要

掃除をラクにするためには、住まい方の改善と住まいの改善が必要となる。


住まいに限らず、建物の掃除をラクにするための、新築及びリフォームを行う際に、掃除学を取り入れて、ビジネスモデルを考えてみる。



企画:建物を決める

掃除がラクな建物の企画を考える時、はじめにどんな建物なのかを決める。


建物にもいろいろあり、住まいで言えば、戸建やマンションなどの集合住宅。その他、店舗やオフィスビルや大型商業施設。

病院も診療所や総合病院、動物病院などもある。

その他、介護施設や学校など、建物や使用目的に応じた、掃除対策が大切となる。



戦略:テーマを決める

様々な建物に対して、戦略的にテーマを決めていく。


例えば、住まいの中で、家事としての掃除をラクにすることをテーマとするのか、または、衛生性をテーマとしアレルギー対策の要素を取り入れブランディングしていくのかなど、掃除をラクにすることで、他との差別化を図る上でも戦略的な特徴を持たせることができる。


もちろん、複合的にテーマを組み合わせることもできるのである。


例えば、ペット対策として掃除のラクな建物にするが、同時に衛生性も考慮して、「ペットアレルギーでもペットを飼いたい人に向けた住まい造り」や、「ペット同伴可の商業施設」なども良いだろう。


その他、掃除メンテナンスのラクなビルやマンションなどは、「維持管理に関するライフサイクルコストを削減」するための仕組みを取り入れて、新築及びリフォームやリノベーションを行うこともできる。


掃除がラクな建物は、デベロッパーやハウスメーカーやゼネコンや建築家及び設計士などの、建築業界関係者だけでなく、家電メーカーや設備関連及び建材業界にも新規市場創出の可能性を秘めている。


住まいもビルも、すべての建物は様々な素材の集合体でもあるからである。



開発:知的財産

戦略テーマに沿った建物や素材を考慮するとき、そこには新商品開発に伴う知的財産、つまり特許ビジネスも含まれてくる。

なぜなら、現行の製品でも、掃除のことも考えられている製品はあるが、清掃性改善の専門家がたずさわっていない製品と言えるからである。


ほとんどは、ユーザーの不満や問題点をマーケティングにより拾いだし、企業の社員による、掃除の専門家でない人達により考えられている。


掃除の理論がまとまりきれていない現状で、掃除のプロとは施工業者としての役割が大きく、汚れを落とすことには優れていても、掃除をラクにする専門家とは言えない。

そのような意味でも、10年以上前(2006年)からその分野で研究している私は、唯一の掃除の国家資格を多数持つ掃除をラクにする専門家とも言えるのではないだろうか?


今後、掃除学が認知され普及することで、掃除のプロの事業領域も増えるのかもしれない。



広報:掃除学と掃除情報の発信

ビジネスにおける、広報活動はとても重要である。

掃除情報発信においても、掃除学は新しいジャンルを築くこともできる。


今まで多くのメディアや企業が掃除情報を発信してきたが、それらの多くは、作業方法の一つを紹介していたにすぎない。

それは、時にブームにもなるが、すべての人にあった作業方法ではないとも言える。


掃除理論をまとめた、掃除学を活用すれば、個人それぞれで違う、ライフスタイルや住まい、キレイや汚いという感覚の違い、掃除に対する考え方の違いなど、その人や建物に応じた掃除方法および予防方法を提案できるのある。



掃除学を活用した戦略的広報活動

植木照夫の掃除学は、学問としてしっかりとした基礎理論が、これからの掃除情報に新たなジャンルを築く。

掃除学を取り入れて建物や商品を作り、住まい方や使い方などソフト面においても情報発信していく。


広報活動における情報の信頼性は、そのまま会社や商品の信頼性につながり、イメージアップされていくものと予想できる。

もちろん、各メディアにおいても信頼できる情報発信は、視聴者や読者に対する信頼性を獲得でき、スポンサーに対する信頼も得ることになる。


この、信頼できるコミュニティーが構築できると、様々なマーケティング情報を獲得でき、それらを商品や次なる情報へフィードバックさせていくことで、戦略的広報活動として、多くのメリットを得ることができると感じている。






まとめ

植木照夫の掃除学を活用して、掃除のラクな建物を作るビジネスモデルを考える際、企画としてどんな目的の建物なのかを決める。

住まい、オフィスビル、商業施設、病院、介護施設、学校など、様々な建物に適した掃除がラクを考えていく。


そこに、作る建物に対して、戦略的にテーマを決めて、他との差別化をはかる。


掃除学をもとに開発された新商品などは、特許などの知的財産を生むこともあり、どこまで注力するかも商品価値を左右する。


広報活動として、企画の建物や商品に対する、住まい方や使い方などソフト面においても、情報発信することが大切である。


さらに、その後のメンテナンスを含むサービスも考え準備しておくことで、建物とその使用者との長期的なコミュニティーを確保できる。





具体的なビジネスモデル

では、もう少し具体的なビジネスモデルについて記す。


掃除がラクな建物の種類を住宅とし、戦略的テーマ例をペットと暮らすことに絞り、ペット市場の現状と掃除について次章の、第4章—2で紹介したいと思う。



掃除学関連知識の第4章「掃除と経済・その2(新規市場創出例:ペット市場)」について解説したいと思う。



著者:植木照夫(クリーンプロデューサーベスト株式会社 代表取締役、掃除学研究所所長)

植木照夫の掃除学研究所

掃除学研究所は、植木照夫により発案された、掃除理論の集約的公式「掃除の方程式(うえきの方程式)」と「掃除がラクになる法則(うえきの法則)」を基に、幅広く関連知識をまとめた新しい学問の研究サイトです。